小麦アレルギーに立ち向かう男

小麦アレルギーになった彼女に、グルテンフリーで美味しいものを食べさせたい彼氏の冒険

グルテンフリーラーメン

小麦アレルギーの人にとって天敵となるラーメン
しかし都会の喧騒に隠れ、ひっそりとグルテンフリーラーメン」なる固有種が存在しているという噂を聞きつけた我々はアマゾンの奥地へと向かった。

 

いや、実際には新横浜に向かった。

横浜駅JR東海道新幹線JR横浜線横浜市営地下鉄)より徒歩5分。新幹線が止まる駅にも関わらず全く栄えていないと名高い新横浜は、僕も初めて降り立った地だ。

テクテク歩いていくとまず目に飛び込んでくるオブジェ。

 

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無機質にひたすら箸が上下に動いており、麺は排気ガスか何かで黒ずんでいる。これは入館前から食欲を刺激してくるアプローチだ。黒コショウ、もしくは焦がし黒マー油がまみれた麺に見えなくもない。思わぬ先制攻撃に、僕は息を飲んだ。

 

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建物名は意外と小さめ。ビルの上にデカデカと看板とかは無い。とはいえ、ハズキルーペ要らずの大きさでは書かれているので諸兄姉の皆様におかれましてはご安心を。

 

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入場料が掛かる。

大人(中学生以上)310円
小人(小学生)  100円
シニア(60歳以上)100円

※小学生未満は無料
障害者手帳をお持ちの方と、同数の付き添いの方は無料

 

ラーメンを食べる時に料金が掛かるのになぜ入場料が掛かるんだろうと謎だったが、中で小規模のショーっぽいのをやってたので、おそらくそういう人たちの食いぶちだろう。

 

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入場するとまず物販スペースなどがある。中で営業している店のインスタントが売ってたりして、お土産には最適だ。僕はニンニク系のラーメン屋に行くと置いてある「ガーリックプレス」がめちゃくちゃ欲しかったが、今夜はディナーにお金が掛かる。心を鬼にしてグッと堪えた。

 

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第一印象は「思てたんと違う…」。

驚くことに地下空間は昭和レトロな内装になっており、純喫茶や駄菓子屋なんかもあった。漫談みたいなショーをしてる人や、紙芝居の準備をしている人もいた。古き良き日本の原風景に思いを馳せ・・・いや、腹減ったからそれどころではない。

 

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僕はてっきりフードコートで色んな店のミニラーメンを少しずつ食べれる風景を思い描いてたが、ミニラーメンはあるものの1つ1つ入店してガッツリ食うスタイルなので、何店舗もハシゴしようとは思わなかった。結局1つのお店だけで帰ったので、ラーメン代+入場料310円ということになる。

 


さて、今回のお目当ての店は「無垢ツヴァイテ」さん。

 

グルテンフリーラーメン
Gluten Free Ramen

日本の食文化としてのラーメンを世界に広めることを使命とし、これまで「ベジタブルラーメン」や「ムスリムフレンドリーラーメン」など、宗教、思想によってラーメンを食べられない方々にも美味しくラーメンを食べていただくラーメンの開発に取り組んできました。そして昨今、来場されるお客様よりリクエストが増えてきたのが「グルテンフリーのラーメン」です。 グルテンフリー食品は本来、アレルギーの方のために生まれたものですが、昨今は思想的にグルテンを摂取しない人々が欧米を中心に増えています。
日本の食文化としてのラーメンを世界に広げることを使命とする私どもとしても、ラーメンが本当の意味でグローバル化する為に、今回、世界中で増え続けている「グルテンフリー」を取り入れたラーメンの開発を行いました。

 
なんという有り難いお店だろうか。日本、いや世界中で小麦アレルギーに苦しむ人たちに、ぜひ訪れてもらいたい。そしてグルテンフリーがもっと認知され、アレルギーでも食べれる食事を出す店が都内にも増えてほしいと切に願った。

 

グルテンフリーラーメンを作る上での難しさ
Difficulty of making Gluten-free ramen.

グルテンフリーラーメンを作る上で難しいのは麺に使用する「小麦粉」と、タレや味付けに使われる小麦粉を含む「醤油」です。「米粉の麺」やでんぷん質から作られた「春雨」などを使用しますが、麺を茹でる際に、通常の小麦を含む麺を茹でている鍋で一緒に茹でることはできませんので、専用の鍋で茹でる必要があります。次に醤油です。ほとんどの醤油は小麦粉を含んでいます。醤油は味の決め手となる「タレ」や、チャーシューやメンマなどの具材の味付けをする際にも使用します。そのため、小麦を含まない醤油や、塩や味噌などを使用し、具材も別に味付けする必要があります。 これらの状況を踏まえて次頁の店舗にてグルテンフリーラーメンの開発を行いました。

 
鍋や味付けにも気を遣ってくれている徹底ぶり。これなら彼女にもアナフィラキシーショックの心配なく食べさせられると安堵した。

 

まずは食券を購入するのだが、グルテンフリーラーメンを選ぶと店員さんが来て「アレルギーですか?」と確認される。ハイと答えると注意事項のような紙を持ってきた。


グルテンを含む食品を扱う厨房で調理しております。セリアック病やグルテンアレルギーの方は、各自の判断でお願いいたします」とのこと。

 

確かに普通のラーメンも出す店なので、厨房に微量ながら小麦粉が舞っていることも考えられる。というかほかの店舗はすべて普通のラーメン屋なので、重度の人はフロアにいるだけで無理なのだろうか?


幸いウチの子は「醤油に含まれている小麦ならセーフ」というレベルなので今回は問題なく食事ができた。(一応事前に抑制する薬を飲んでいたが、特に症状が出ることもなく済んだ)

 

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グルテンフリーラーメン 950円。

味付けは味噌ベース。麺は米粉のストレート麺を使用。
小麦粉を含まない特製の味噌ダレとニンジン、もやし、玉ねぎ、キャベツ、ドイツの郷土料理であるザワークラウトを鶏油で香づけしたものと無垢スープを合わせ、豚ロースのコンフィを塩と無垢特製コショウのジーベンで風味づけ。

 

初めて米粉麺を食べたのだが、思った以上にちゃんとした麺でビックリした。というか見た目ではほぼ分からない。小麦麺と食べ比べてしまうと若干モチモチ感は欠けるが、1~2年ぶりにラーメンを食べた彼女は「全然わからない、完全にただのラーメン。美味しい!」と喜んでいたので、単体で食べれば全く気にならないだろう。

 

はしゃぐ彼女(のおっぱい)を見つめながら、僕はぼんやりと考えていた。

 

幼少期からのアレルギー体質だと「ラーメンの美味しさ」を知らないのだろうが、彼女は24年もの間、豚骨も醤油も、家系も次郎系も、コッテリもあっさりも、あらゆる美味しいラーメンを食べてきたのだ。それを急に禁じられたダメージはどれほど苦しかったのだろう。

 

知ってしまっているが故の無慈悲さ。後天性の小麦アレルギーには、ある種の覚醒剤中毒者のような「渇き」があるのではないだろうか。我慢はするけど欲してしまう。食べてはいけないけど衝動に駆られる。それはどれほど辛いことかと考えると筆舌に尽くし難い。

 

だからこそ「美味しい~!ようやく食べれた~!」と感動する彼女を見ていると、僕は涙腺が熱くなる思いだった。アレルギーの人々に優しい料理を作ってくれて本当に有難い。彼女の「渇き」を潤してくれたラーメン博物館、そして無垢ツヴァイテさんには心から感謝したい。

 

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なお、これは僕が食べた通常メニューの「無垢ラーメンNull」 920円。
とっても美味でした。


小麦アレルギーの人も、家族や大切な人に小麦アレルギーが居る人も、みんなで安心して美味しいラーメンを食べられる「新横浜ラーメン博物館」にぜひ一度足を運んでみてほしい。

美味しい食事の後には、笑顔が溢れる幸せな時間に包まれることだろう。

 

グルテンフリーラーメン - 新横浜ラーメン博物館